社食でジゲンのテーブルの横を通ったので、
ちらりとトレーに目を移してみたら、
ぜんぜん減らないまま伸びてしまった、なみなみのラーメン。
病気のことがショックで、
すっかり食欲をなくしている模様。
彼は、あたしが元気をなくすことも恐れているので、
基本は普通に振舞っているのだけど、
それでも、時々ぼそっとこぼす言葉の超ネガティブっぷりから察するに、
かなりやられている、のだと思う。
検査のためだけでも2週間は入院しなくちゃいけないらしく、
手術となったら、また入院だし、
こんなに病気ばっかりして休んでたら、
いい加減、会社くびになる気がー、とか言ってるし。
ならないし!
あとは、
結婚早々ややこしい病気になるなんて、
結婚詐欺みたいじゃねーか、とかさ。
うちの親に謝らないと、とかさ。
そんなこと誰も思わんつーの!
もしかしたら早く死ぬかもしれないから、
子作りも止めた方がいいのかな、とも言ってたな。
死なんっつーの!
*
2年前に、ジゲンが心臓の病気で倒れて、
毎日起こる発作に苦しみながら療養していた2ヶ月間。
あの頃の方が、
あたしはずっと怖かった。
毎日さ、
今頃倒れて、死んじゃってたらどうしようって、不安で不安で。
その少し前に、従姉弟が突然死していたので、
心臓なんて簡単に止まるのだ、という考えがどうしてもぬぐえなくて、
怖くて、怖くて。
死なない、ジゲンはそんなに簡単に死なない、
死なない、死なない、大丈夫って、
自分に言い聞かせ続けた日々は、
多分、少しだけあたしを強くした。
本当は今も、怖いんだけどね。
それでも、その都度ちゃんと、自分を説得できる技術を、
会得できている気がする。
死なない死なない大丈夫ーって自分をちゃんと落ち着かせて、
続く毎日を、ちゃんと楽しみながら、暮らせている。
そりゃあさ、
あたしたち夫婦は、
もしかしたら、人よりも、一緒にいられる期間が短いかもしれないし、
そうじゃなくても、いつも病気の影に怯えていかなくちゃいけないけれど、
だからこそ、このつまらない毎日のありがたさを、
日々感じながら生きることができているし、
それは、今まで知らなかった、幸せな日々だ。
だから、
あたしは、普通でいよう。
2人で不安に押しつぶされて、
暮らしを止めちゃったら、治るもんも治らんぜー。
暮らしも、止めないし、
希望も捨てないし、
子作りだって、続けたい。
そりゃ、
養うことへの不安があるのもわかるけどさ、
仮に、ジゲンが働けない身体になっちゃったら、
専業主夫になればいーじゃんか。
しっかり家で子育てしてくれてんなら、あたしは外で働くし。
生活のありかたなんて、ひとそれぞれで、
あたしたちはいつだって、
あたしたちの状況に合わせて、
あたしたちにとって一番ここちよい暮らし方を、
選べばいいのだと思う。
なんて。
そんなことを、
ゆらゆらと考え続けている。
今のジゲンには、言えないけれどね。
あたしが普通でいること。
それがとても大事。
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